この事例の依頼主
20代 男性
Aさんは、東京都内の駅構内のエスカレーターで前に立っていた女性のスカートの中 を携帯電話のカメラを用いて、盗撮をしたところを警察に現行犯逮捕されました。携帯電話のカメラフォルダーには、今回撮影した画像だけではなく、多くの女性のスカートの中の画像が発見されました。警察としては、被害者の通報を受けて事前にエスカレーターの近くで犯人が現れるのを張っていたようです。Aさんは、素直に事実を認めて、取り調べにも積極的に協力しましたが、身柄を拘束されていたため会社を休まざるを得ず会社にどのように説明をしたらよいかわからないような状況でした。逮捕をされたという連絡を警察から受けたご家族が心配になって当職のところにご相談に来られました。まずは、逮捕(3日間の身柄拘束)から勾留(10日間の身柄拘束が原則で、10日間の延長が可能である。)に切り替えられないようにするために、「罪証隠滅のおそれ」も「逃亡もおそれ」もないことを主張した「上申書」を捜査機関に提出し、勾留をしないように働きかけました(両親の身元引受書も添付して提出しております。)。そうしたところ、逮捕された後、2日程度で身柄が解放され、在宅事件に切り替わりました。Aさんは,今回の事件が何らかの形で勤務先にばれてクビになってしまうのではないか,被害女性にどのような対応をすればいいのか,どのような処分が下されるのかなどさまざまな不安が生じたため釈放後、御両親と一緒に当職の事務所に打ち合わせに来ました。
Aさんは前科がつくことで今後の生活に支障が出ることを不安ではあるものの,被害者の女性の方へ償なわなければならないという気持ちがありました。本件のような盗撮のケースでは,被害者の方は被疑者本人への連絡先の開示を拒むのが通常です。ただ、本人に連絡先を教えないという約束の下で弁護士限りであれば連絡先を教えてもよいという被害者の方も多くいます(検察官が示談のために被害者を説得してくれる場合もあります。)。今回のケースも被害者の方が弁護人限りということで連絡先を教えてくれたことから、当職が弁護人として被害者の方と交渉することになりました。Aさんから弁護人に選任された後,捜査機関から被害者の方の連絡先を聴取し,すぐに被害者の方へ連絡をいたしました。被害者の方がまだ18歳であり、未成年であったため,被害者のご両親を窓口に話合いを進めることとなりました。被害者の両親の被害感情は大変に強く,「示談をするつもりはない」という強い意向をお持ちのようでした。示談を成立させることは難しいのではないかと予想されましたが,①今回の事件についてAさんが深く反省していること,②二度と同じ過ちを繰り返さないと確約していることを粘り強く伝えていった結果,精神的苦痛を与えた事に対する一定の慰謝料の支払いを条件に、ご両親とご本人から「本件については、寛大な心で罪を許す」という話をして頂き、示談を成立させることができました。当職は、被害者の方との「示談書」と起訴猶予が相当である旨の「意見書」を検察庁に提出いたしました。そうしたところ、Aさんの不起訴処分が確定いたしました。被害者の方への償いをすること,前科が付くのを回避することの両方を実現することができ、また,一番恐れていた勤務先に本件が発覚することもありませんでした。
今回のように,被害者の方と示談が成立し、不起訴処分を獲得するには事件発生から弁護士に依頼するまでのスピードが重要であると思います。また、示談交渉は、被害者側にとってみれば、加害者本人に連絡先を教えたくない、連絡を取りたくないという感情があるために、間に人を立てなければ進めることができません。示談活動は,交渉をするタイミングを失ってしまうと,検察官が示談などの結果を見る前に「起訴/不起訴の判断」を下してしまったり,「加害者は反省をしているのか」という被害者の被害感情がどんどん強くなって示談ができなくなってしまうリスクもあります。弁護人としては、全力で不起訴処分などの獲得を目指しますが,なるべく早い段階で弁護士に相談することが肝要です。初めて警察に逮捕されて、どうしたらいいかわからない不安で一杯であると思いますが、まずは弁護士に相談をすることをお勧めします。